今日は、明日からの6連戦に備えて、大野練習場で軽めの練習を行いました。私は、この連戦をとても大事なものと捉えています。自分のすべきことに集中して、結果、内容ともに納得のいく投球をしたいと思います。
それでは連戦を前に、ドミニカでの出来事を思い出して、気分を高めていきたいと思います。少し長いですが、お付き合い下さい。
前回は、カープアカデミーがセマナ・サンタの休暇中の為、実戦登板から遠ざかるのを心配した上之さんが、サンディエゴ・パドレスアカデミーの監督と交渉して、私の実戦登板(先発)を実現させるという裏技に出たところまでお伝えしました。
「無理を言って投げさせてもらっておいて、みっともないピッチングをするわけにはいかない。」
市民球場での入団テスト以来、何も考えずポジティブにやってきた私が、初めてプレッシャーを感じました。
「いきなり、見ず知らずの日本人がやって来てピッチャーをやっている。守っている野手はどう思うのだろう?もともと先発予定だった投手は腹が立つだろうな。」
いろいろと考えてしまいました。
そして、迎えた4月8日。私は、あまり目立ち過ぎないように、下はカープのユニフォーム、上は地味な色のTシャツというスタイルで、パドレスの一員としてマウンドに立ちました。周りの選手は当然、パドレスのユニフォームで統一されています。私の願いとは裏腹に、やっぱり目立ちまくっています。
いつもとは違う緊張感がありました。力みも出ました。でも、周りの野手は盛り上がっています。みんな1球ごとに私に声を掛けてくれます。ダイビングキャッチもありました。キャッチャーも必死にリードしてくれています。ベンチも含めて、私を心から応援してくれているのが伝わってきました。
「野球って、やっぱりいいなぁ。」
私は、マウンド上で呟きました。周りの選手の掛け声を聞いたり、打球を必死に追う野手の姿を見ると胸が熱くなりました。見ず知らずの私ですが、今、私はみんなの一員です。みんなから力を貰って相手打者と対峙しています。
結果は、3回を投げて、被安打4、奪三振7で失点は1でした。降板後は、みんなから力を貰ったお返しに、ベンチから一生懸命応援しました。まだスペイン語で気の利いた声を出すことはできませんでしたが、手を叩いたり、ベンチに戻って来る選手をハイタッチで迎えたりしました。
応援したかいもあってチームは勝ちました。いつもとは違う緊張感を持って臨んだ試合だったので、勝利のハイタッチの味もまた格別でした。投球内容は決して満足のいくものではありませんでした。しかし、この日に関して言えば、それはたいした問題ではありません。それよりも、野球を通してこんなにたくさんの人と仲間になれたことが幸せでした。みんなと一緒にいたのは時間にすれば、僅か3時間足らずですが、もう何年も一緒に戦った仲間のように思えて、別れる時はとても寂しい気持ちになりました。
サンディエゴ・パドレスのアカデミーのみなさん。私は、みなさんと戦った、野球の魅力がいっぱい詰まったあの試合を、決して忘れません。本当にありがとうございました。
いろいろなことがあったセマナ・サンタ休暇も終わり、再び、カープアカデミーでの練習が始まりました。この時期の私は、投球フォームのことで悩んでいました。ドミニカに来て3ヶ月が経過し、これまでのように目に見える進歩がなくなっていました。良くなる為に、フォームの修正を重ねましたが、なかなかしっくりいかず、フォーム修正の為の投げ込みが、肩や肘を疲労させる結果になりました。
もどかしい日々が続きました。試合でもなかなか結果が出ず、多少焦りもありました。しかし、そんな低迷ぎみの私に、驚くべき情報がもたらされました。
「阿南さんがドミニカにやって来る!」
カープで監督まで務め、その後フロント入りした、あの阿南準郎さんです。驚きました。これは、のんびりしてられません。今の私の状態では、監督まで務めた方を満足させられる訳がありません。今までも必死にやっていたつもりでしたが、さらに気合いが入りました。阿南さんが来るまでの約半月、やみくもに投げるだけではなく、フォームをビデオに収めて検証したりして、野球について考える時間を増やしました。また自主練習の時間を大幅に増やして、その大半を走り込みに充て、下半身強化に今一度力を入れました。
成果は徐々に現れました。腕の振りがシャープになり、球のキレが出てきました。次第に自信も出てきて、投げることがまた少しずつ楽しくなってきました。
私は、その年のドラフトに指名してもらえるような実力をつける為にドミニカにやって来ました。その大きな目標に向かって日々努力してきたつもりでしたが、今思えば、それは比較的長期的な目標であり、少しでも油断するとややぼやけてしまうことがありました。しかし、阿南さんがやって来ることを知った時点で、私に大きな短期的な目標が出現しました。
「阿南さんが来るまでの半月で、ある程度のレベルに到達しなければ、その先の道は閉ざされるかも知れない。」
半月でやらなければならないことが決まったことで、逆算して、その日一日でやるべきことが明確になりました。
私はこの時、大きな目標を達成する為には、それを達成するまでの段階で、中期的、短期的なより具体的な目標設定が不可欠であることを学びました。当たり前のことであるかも知れませんが、それを身をもって体験できたことは、その後の生活に役立ちました。
このように、阿南さんは実際に顔を合わせる前から、私に多大な影響を与え、成長を促してくださいました。その後の直接指導も含めて、阿南さんも私にとっての恩人であることは間違いありません。
そして迎えた5月14日。ついに阿南さんがアカデミーにやってきました。
(私)「はじめまして、広池です。よろしくお願いします!」
(阿南さん)「おー、君か。今日の試合、投げるんだろ。じっくり観させてもらうよ。」
やっぱり、監督経験者。オーラがあります。身なりもキチッとしていて、その話し方も含めてスキがありません。身が引き締まる思いがしました。
しかもその日、私は先発予定です。気合いが入らない訳がありません。
結果は・・。やりました!4回を2安打、奪三振6の無失点。ドミニカに来て15試合目の登板でしたが、今までで最高の出来です。コントロール、ボールのキレ共に良く、ここ最近の練習の成果が形となって表れました。嬉しいです。
意気揚々と引き上げて、阿南さんと上之さんのところへ行くと、上之さんはニコニコ顔でほめてくれました。しかし、阿南さんは顔色を変えずに言いました。
「お疲れさん。まずまずだけど、もう少し腰で投げることをイメージしたほうがいい。あと、足を高く上げるのはいいが、後方に入り過ぎると投球の際の開きに繋がるから注意が必要だ。ブランクがあるのは分かっている。でも、それを言い訳にせず、もっとペースを上げなさい。」
と厳しいお言葉。やはり求めているレベルが違います。でも、今日の私は持てる力を存分に発揮しました。同時に、大きな自信を掴みました。阿南さんは、これから2ヶ月に渡ってドミニカに滞在され、私だけではなく、アカデミーの選手やコーチも含めて指導をされます。今日の感覚を発展させていけば、いつか阿南さんにも認めてもらえるような投球ができるのではないか。そんな希望を抱きながら、私は、アカデミーを離れました。
今日は、ここまでにします。次回は、この好投から2日後の、ある忘れられない悲劇からお伝えします。
入団への道(10)
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読むのが遅くなってしまいましたが・・・(^.^;)
今回も充実したドミニカでの様子が伝わってきて楽しかったです。
阿南監督との出会いや厳しいお言葉などもその場でみているような臨場感がありましたね。表現力、流石です・・・
でも最後の「ある忘れられない悲劇」が気になります~(T.T)
次回作、お早めに・・・(笑)
いつも楽しく、興味深く読んでいます!(^^)!
遠い存在だったプロ野球の選手を身近に感じられます。
広池さんが入団した頃を思い出しました。
安定した大きな会社で勤務していたのに、不安定な職業への転身を決意された広池さんの勇気と情熱が心に触れました
頑張っている人を見ると何か熱くなってくるんですよ(^^)v
広池さんがどんな想いで、どんな道を歩いてきたのか、とても興味あります。
次回も楽しみにしてます♪
いつも楽しく、興味深く読んでいます!(^^)!
遠い存在だったプロ野球の選手を身近に感じられます。
広池さんが入団した頃を思い出しました。
安定した大きな会社で勤務していたのに、不安定な職業への転身を決意された広池さんの勇気と情熱が心に触れました
頑張っている人を見ると何か熱くなってくるんですよ(^^)v
広池さんがどんな想いで、どんな道を歩いてきたのか、とても興味あります。
次回も楽しみにしてます♪
広池さん、こんにちわ。
いつも楽しく読ませてもらってます。
最近コメントが少ないなーって思ったので
「広池さんも同じことを思われてたら寂しいのう。。。」
と思って書き込みしました。
プロの現役選手の生の気持ちを毎日知ることのできる
このブログは凄いです。
野球ファン、カープファンの僕にとってはたまりません。
これまでの僕のように「読み」に徹してる人も多いと
思いますのでこれからも、貴重な情報を発信してください。
広池さんには思い出があります。
昨年のお盆の巨人戦。青木高選手が初回に打ち込まれたのですが
今はTに行った○井が反撃して、広池さんをはじめとする
中継ぎがふんばって逆転勝ちした試合に行っていました。
神戸に住みながらも娘(現在7歳)をCファンに仕立て上げ、帰省がてら足を運んだ試合は劇的なものだったのですが、ヒーローインタビューが広池さんでした。
で、インタビュー後広池さんがライトスタンドへ行った後、
1塁内野指定で見ていた僕ら親子はネットにかぶりついて「広池ーーっ」って叫びまくっていたら、近くまで来てくださり帽子をとって挨拶してくれました。
もうそれ以来、娘は「カープの広池は友達」って言うてます。
一人のプロ野球選手がネットごしにふるまってくれるひとつのしぐさがどれほど感動を与え、心に残る思い出になるか痛感しました。
これからも体に気をつけてがんばってください。
広池さん、一緒にCS行きましょう。いや連れて行ってください。
広池さんお疲れ様です!
今回も読み入るように読ませていただきました!
言葉も通じない、初めて会った選手でも野球は心を繋ぐ。
本当に野球は素敵な魅力がいっぱいですね!
あと、目標を掲げそれに向けて頑張ること。
本当に大事なことだと思います!
次回も楽しみにして待ってます!
広池さんの今の目標、『結果を残し1軍』に向けて、明日からの試合頑張って下さい!
頑張れ!広池さん!!
こんにちわ!
今日の大野練習場も屋根があるとはいえ、さぞかし暑かったことと思います。
先日、市民球場でお逢いすることのできたドミニカの方とお話しした時もそうでしたが、
もともと気さくなお国柄にもってきて、ともに共有できる「野球」があれば、言葉は要らないのかもしれません。
それにしましても、「入団への道」の文章からは、努力と共に、「目標を、具体化してとらえること」のうまさを感じます。
また、それに合わせるように、うまい具合に「課題とヒント」をくれる出来事が起こります。
読み進めますと、まるで階段を上るがごとく、ちょっとずつ、目指すものがより高くなっていくようです。
1度や2度ならば、偶然なのかもしれませんが、やはり、自らの試練としてとらえようとしている姿勢が、そうさせているに、ほかならないように思います。
いつも同じことを言うようですが、この「入団への道」が、心身を良い状態へ導いてくれますよう祈っております。
では。