市民球場の思い出(2)

今日は、久しぶりになりましたが、市民球場の思い出についてのお話しをしたいと思います。
1998年9月27日。ドラフト指名を目指し、ドミニカ共和国から帰国して、ファームの秋季練習に参加していた私は、その日の練習を終えて、他の選手と共に市民球場に向かいました。この日は、尊敬する大野豊さんの引退試合です。
球場に着きました。その年、カープは優勝争いからは脱落していましたが、スタンドは満員です。私は、1年前の入団テストの際にグランド内に入りましたが、お客さんで埋まった市民球場に来たのはこの日が初めてです。私は、その雰囲気にただただ圧倒されました。レフトスタンドの上段の一部の横浜ファンを除いて、赤く染まったスタンド。グランドとスタンドの近さから感じる臨場感。チャンスの時にオーロラビジョンに映し出されるお好み焼き。私が、今まで行ったことのある首都圏のどの球場よりも一体感があり、熱気に溢れ、地域色が感じられ、みんなが心から野球を楽しんでいることが伝わってくる最高の球場でした。
「いいなぁー。市民球場。」
ネット裏の一番上の立見席に陣取った私は、思わず呟きました。
先発は、1月にドミニカで一緒に練習を行った黒田。期待された2年目は、ここまで白星がなく、苦しいシーズンを送っていたようですが、この日は違いました。大野さんの引退試合という特別な日、そして、満員のファンの前でこの男が燃えない訳がありません。強気の攻めで7回を1失点。その役目を充分に果たして、大野さんにバトンを渡しました。
8回。横浜の攻撃。場内に投手交代のアナウンスが響きます。
「ピッチャー大野。背番号24。」
リリーフカーに乗った大野さんが姿を現すと、スタンドは総立ち。この日いちばんの盛り上がりです。鳥肌が立ちました。
「かっこいい。」
またまた私は、呟いてしまいました。
大野さんは、マウンドで躍動していました。代打の中根さんに対して、立て続けに力強いストレートを投げ込み、最高球速は何と146キロ!これが引退を決めた人が投げる球なのでしょうか。信じられません。最後も140キロを軽く超えるストレートで空振りの三振。万雷の拍手を浴びながら、最後のマウンドを下りました。ご本人は晴れやかな表情に見えましたが、守っていた野村さんなどは、三振を奪う前から守備位置で涙を拭っているように見えました。大野さんがチームの中でどれだけ尊敬されていたのか、その様子を見ただけでもうかがい知ることができました。
その後、マウンドを受け継いだのは、これまた、自主トレ期間にドミニカで一緒に汗を流した新人の小林幹英。彼は、1月にその投球練習を見た野村さんが予言した通りの大活躍。新人王にも手が届くような働きを続けていました。この日も、プレッシャーのかかる中、堂々と最後まで投げ抜き、セーブを挙げてチームに勝利をもたらしました。
「みんな、かっこいい。俺も、カープのユニフォームを着て、市民球場のマウンドに立ってみたい。」
私は、最高のゲームを見せてもらったお陰で、カープのそして、市民球場の魅力に完全に引き込まれました。
試合後の引退セレモニーで大野さんは、
「我が選んだ道に悔いはなし。」
というあの有名な言葉を残して、グランドを去りました。セレモニーを見守ったカープファンのみならず、帰ることなく球場に残った横浜の選手、そして、横浜ファンの中にも涙を流している人が見受けられました。大野さんは、チームの中だけではなく全ての人に愛される凄い人でした。
セレモニー終了後、私は、他の選手と一緒にロッカーの前まで行き、幸運にも大野さんとお会いする機会を頂きました。
「今、カープのテストを受けている広池といいます。長い間、お疲れ様でした!」
私が、緊張の面持ちでそう言うと、大野さんは優しい笑顔で、
「ありがとう!君もこれから頑張れよ!」
としっかり目を見て言って下さいました。私みたいな者に対しても慌ただしい中、ちゃんと足を止めて丁寧に対応する、テスト生からはい上がった大先輩のそんな姿を目の当たりにし、私は、改めて大きな尊敬の念を抱きました。
私が、初めて観戦した市民球場での試合は、今でも強く心の中に刻まれています。晩年は、この球場のことを古いとか、狭いとか、言う人もいましたが、カープの投手である私にとっては、思い出の詰まった最高の球場です。特に、以前にも触れたことがありましたが、この日のようなデーゲームの雰囲気が大好きで、入団以来今日まで10年間、私の心を掴んで離しませんでした。中継ぎでの登板が多い私は、スタンド下のブルペンの中にいることが多く、登板しない限りその大好きな雰囲気を味わうことができません。そこで、デーゲームの際は、初回をベンチの中で過ごして観戦した後、スタンド下の通路を通ってブルペンへ向かう投手が多い中、私は、わざわざグランドの中を通ってブルペンに向かい、その空気に直接触れてパワーをもらうようにしていました。その効果もあって、市民球場のデーゲームでは、初勝利や初セーブに代表されるように、いい思い出をたくさん作ることができました。
ここからは、少し余談になりますが、数年前のオフの行事で顔を合わせる機会があった古田さん(ヤクルト)に、私はこう言われました。
「広池。ずるいよ。市民球場のデーゲームの時、お前のリリースポイント見えないよ。」
聞くところによると、プレートのいちばん一塁側を踏み、しかもややインステップしながら、スリークォーターで投げる私のリリースポイントは、右打者から見ると、完全にバックスクリーンからはみ出し、外野スタンドのお客さんの中からボールが出てくるような感じがして非常に見づらいそうです。特に、晴れた日に白い服装の人が多いと最悪であると言っていました。私が大好きな市民球場のデーゲームは、実はこんなところで力を貸してくれていたのです。驚きました。
市民球場ラストイヤーの今年、この球場での登板は4月以来ありません。何とかもう一度あのマウンドに立つ為にファームでやってきましたが、いまだその願いは叶いません。残り試合は少なくなりましたが、最後まで諦めずに今まで同様に、野球に励んでいこうと思います。今日も、長い文章にお付き合い頂きありがとうございました。

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コメント(7)

広池さんお疲れ様です!

子どもが親の背中を見て育つように、ベテラン選手の背中を見て若手選手は育っていくんですね!
今のベテラン選手があるからこそ、今の若手の活躍があるんだと思いました!
市民球場にもファンもそうですが、選手も色んな思いが詰まってるんですね!
本当になくなってしまうのは寂しいです!
最後の最後までしっかり応援し、その最後を見届けたいと思います!
そしてそのマウンドに広池さんの姿があれば最高です!

頑張れ!広池さん!

まっつん : 2008年9月13日 08:36

お疲れ様です…m(_ _)m

あの感動的な大野様の引退試合を広池さんもご覧になっていたのですね…。
大野様信者である私ももちろん見に行っていました。
間違いなく号泣するであろう…と思い、母を連れて行きました。
友人には迷惑かけれませんからね…。
案の定、号泣…そして歩けなくなる位の状態でした…。
グラウンドを回る大野様に近づくことも出来ずにいた私を母が最前列まで連れて行ってくれました。
ほんの少しですが、大野さんの手に触れることが出来ました…。
今でもその感触は忘れていません…。
母に感謝です…m(_ _)m

そんな憔悴しきった私に光を与えてくれたのが、広池さん、貴方です。
広池さんに大野様を見た気がしたんです。
だからと言うわけではありませんが、広池さんには必ず、今年市民球場のマウンドに立ってもらはなくては…。
一緒に最後の市民球場を見届けたい!!
必ず、1軍に戻ってきてくれると信じております。
広池さんの願いが必ず叶うと信じております。

頑張れ!!広池浩司!!

今日は今から甲子園に向かいます。
明日は北神戸→甲子園とご老体の私にはHARDですが、広池さんに会いにいきます!!

新宿カープおやじ&母 : 2008年9月13日 02:48

広池さん、お疲れ様です。

子供の頃から、様々な思い出がつまった市民球場。
いよいよ、ラストの試合が近づいて来ました。
その日を、どんな気持ちで迎える事が出来るのか、
今から正直不安で複雑です。
今でも、出来る事なら、あのまま残して、年に何回か試合をして欲しい。

広池さんの言う通り、
市民球場程、雰囲気があって、
カープの選手の方達が身近に感じらる、
こんなに愛すべき球場はありません。
古い狭い汚いと本当にいろいろ言われます。
僕らもいろんな球場に行きますが、
他の球場でも、酷い部分はたくさんあるのに、
なんでいつも市民球場だけ、こんなにも言われるのか、本当に悔しいです。
僕も市民球場のデーゲームが大好きです。
前に書いたかも知れませんが、
デーゲームの終盤、そしてナイターのゲーム前に、
名物西日に照らされて、選手達の輪郭がオレンジ色に浮かび上がるんです。
みんなキラキラ輝いて、
あの選手達の躍動する光景は、とても美しく大好きです。
他の球場にはない、市民球場だけの素晴らしい光景です。

広池さん、
必ず、必ず、またあそこに立てます!!!
最後まで絶対に諦めないで下さい!!!
必ず、その日は来ます!!!
願いは叶います!!!

今日からのサーパス戦、がんばって行きましよう!!!
広池さんが、好投して、いいアピールが出来るよう、
ここ新宿から、母と強力な念を送ります!!!
最後まで信じて、がんばって行きましょう!!!

がんばれ!僕らの28便!!!

広池選手が初勝利をあげた週の日曜日の朝のカープの番組で、広池投手がインタビューを受けていたのを覚えています。あのころは新井選手と兵頭選手がレギュラーをあらそっていた時でしたか。。
広池選手が登板する日を信じています。

小さい頃から数えきれないくらい通った市民球場。
子どもの頃は遊び場であり、中高生時代は憧れの選手と時間を共有した気になっていた青春の思い出の場所であり、古くても汚くても、本当に大好きな場所です。
今は、試合終了のたび涙が出そうになります。

特にデーゲーム、好きでした。
広池さん、私もあきらめませんよー。ちょっと涼しくなったので、残りのゲームはデーゲームもたくさんあります。そのどこかで広池さんに会えることを願っています。

おおとんび! : 2008年9月12日 19:09

こんにちは!
仮に皆さんの「思い出」を、薄い紙に書き綴ったとしても、市民球場からあふれ出してしまうほど多くの「物語」を、魅せてくれました。
選手の方々からすれば、時に戦場となり、時にステージとなるグランドには、広池さんと同じように、選ばれた人にしか経験することの出来ない瞬間が、刻み込まれていることと思います。
広池さんが、尊敬の念を抱かれた大野さんと同じであろう雰囲気を、時に由宇練習場での広池さんの振る舞いからも、感じるとることが出来ます。
カープ選手の、そんな振る舞いに出逢えるたびに、自らの襟を正しております。
残念ながら、今年は、スタンドの色が、「赤」以外になることはありませんが、白い服装以外にも、広池さんを助けてくれるものは、市民球場には、まだまだ沢山あることと思います。
広池さんと同じく、我々も未だ諦めておりません。
残る試合も、出来る限り足を運ぼうと思います。
そして、その聖地で、バックスクリーンからはみ出す、スリークォーターからのリリースが、見れますこと祈っております。
では。

必ずあります、今季の市民登板!

勝手ながら、私の最近の思い出を書きます。
一昨年のお盆、帰省してなんとほぼ20年ぶり(申し訳ない)
市民球場のライトスタンドへ。そして先発広池!!
幸運な巡り合わせに興奮しながら試合開始を待ちました。
そして広池投手、快調に1アウト取り二番打者のところで。。
突然の豪雨(涙)
皆が避難するなか再開を信じて席に一人座ったまま待ちましたがノーゲーム。しかも最後尾の私が通路に入る頃には晴れ間が。。。。
ずぶぬれのままブーたれながら本通で飲んで帰りました。
今季私は帰れないので、たぶんこれが私の市民ラスト思い出になります。

今季残りは神宮か横浜で広池投手の雄姿を楽しみにしてます。

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